潜水艦岩魚を求めて八久和川リベンジ

登山

シュラフの天井をたたく雨粒の音で目が覚める。

はっとして、寝袋を蹴飛ばし目の前に控える八久和川を覗く…

昨晩と変わらない流れ。

ひとまず安心するも、水面から5mとない砂地にビバークしていたため撤退開始。
冷たく濡れた沢足袋に足をねじ込むと、寝ぼけ眼が一気に覚めた。

一枚岩の端に、手のひらを広げたくらいの小さな落ち込みがついていた。
この落ち込みの幅を増水の目安にしていたが、昨晩と比べそれほど変わらない。

少しの間様子を伺おうと朝食をとる。
バックパックの中でボロボロに崩れたパンを頬張り、温かいコーンポタージュで流し込む。

ふと八久和川に目を移すと、枯れ葉の混じった流れに濁りが入る。

さてはその先、ゴルジュ手前の川面に露出した大岩に顔を向ける。
水流が直撃して人の背丈ほどの巨大な水しぶきを上げている。

増水

みるみる水面が上昇し、今まで川原だった砂地を埋め尽くす。
川幅一杯まで広がるのに5分とかからなかった。
目安にしていた一枚岩の落ち込みはすっかり水流の中。

八久和川に降り立つために下ってきた支流の小国沢にも濁りが混じっている。
8月いっぱい日本列島を覆った前線を考えれば選択肢はなかった。

退却

一度も竿を振らずに、8時間かけて来た道のりをそのまま引き返す。


8月あたまにきて以来、そしてなによりあの大イワナを目撃して以来、もうなにをするにもイワナイワナ…なにをみても魚の形にしか見えないような危険な症状が続いてまして…

https://www.youtube.com/results?search_query=%E7%B4%BA%E5%B1%8B%E9%AB%98%E5%B0%BE+%E4%B8%89%E9%81%8A%E4%BA%AD%E5%9C%93%E7%94%9F

大イワナリベンジにむけて、持ち合わせの釣りバリいっちゃんでっかいのを使って巨大フライを巻きました。

ひとつは幸運を祈ってフクロウ

もうひとつは夏をひきずったクジャク

とはいえ、今年の夏はまったくもって天候不順。梅雨のような前線が永遠日本列島を覆いつくしておりまして、あの増水すると恐ろしい八久和を目の前にして、指くわえて待ち焦がれていました。

そして9月を目前に控えた8月末、天気予報に好天の兆しが…

この期を逃してはといざ出陣とします!

6:20柴ナデ方面登山口出発。

今回は下山で天狗相撲取山からの登山道を使うため、車はそちらの登山口にデポしました。
こちらの登山口まで林道歩き20分くらいです。

ナナカマドが少し赤みを帯びてきています。
秋の足音がすぐそこまで来てますね。

8:20登山道中間にある水場到着
日差しがあるため暑いですが、立ち止まると涼しい。
気温が高くないのを肌で感じます。

途中で男性の登山者とお会いしました。
お互い人に出会ってびっくり。花の時期には人気の場所のようで、「ヒメサユリ」という珍しいお花が咲き誇るとのこと。障子ケ岳まで登るとおっしゃってました。

9:20柴ナデ

稜線まで突き上げると解放感で気持ちいいです。見渡す限りの青空。やっほー

そしてそのまま藪に突入…

今回の下降は前回と違う沢筋を使ってみました。
こちらの方が前半の藪漕ぎ多めですが、後半出合いにあるスラブ滝の巻きが不要です。

何だか知らない花が咲いていました。

熊の食痕。朝日のお山ではあまり熊の気配を感じていませんでしたが、いるものはいるのでしょう。
それほど新しくないので、警戒度薄めです。

11:16出合い870m到着。
昼食をとって休憩。前回とがらりと変わり虫がほとんどいません。
あれだけいたコシジロアブ、いずこや行かむ…

14:52八久和川小国沢出合い到着。
前回テント張った場所の砂地が増水時の水流で削られている…
これは増水に耐えられないビバーク地ということになります。
あれれとちゃんと周囲を調査すると、小国沢に少し入ったところの高台にちゃんとしたテン場がありました。こちらはしっかりと周囲にブナも生えているため増水に耐えられる仕様。
とはいえやはりしかし…
本日ハ快晴ナリ。
せっかくこんなロケーションに来たんですもの、しっかりと渓を見わたせる場所にお泊りしたいじゃないのということで、前回同様の出合直下の大岩横にツェルトをセットしました。

「ここを本日のキャンプ地とする」

そして、本ページ冒頭の翌日大増水へとつながっていきます。
早めに切り替えて来た道を戻ったため、増水で悩むような個所はありませんでした。
とはいえ小国沢にも十分濁りが入るほどの増水で、なんてことない徒渉も足もとさらわれるほどの水圧。高巻きをして水流を避けつつ退却した次第です。

上流に行けばいくほど濁りがひいて水流も細くなる。
さらに日差しが差してきて好天の兆し…

流れが緩んだ場所では魚が定位して餌を待ち構えています。
ちょっとだけ竿振りました。

15:29柴ナデ
ここからは登山道歩き。雨が降っても心配ありません。
ほっと一息つきます。

ウエストパックのテストをしてました。
背面にスマホ用ポケットをつけたら格段に使いやすくなりました。
そして黒の生地を、バックパックと同じ、排水性抜群のナイロン生地にしたため、沢の中での泳ぎで内部に水が溜まってしまう問題も解決しました。

キノコが雨をためてます。

17:13登山口着
なんとか日暮前に到着できました。

「釣りしに歩いた時間16時間、釣りした時間10分」
今回は学びの多い山行でした。

ご精読ありがとうございました。