季節はもう春ですね。
各地方から桜の便りも届いています。
しかしここは雪国・山形県。桜の開花はまだ先のようです。
桜の名所、山形城跡の霞城(カジョウ)公園もまだまだつぼみです。
ということで、冬に行ってみたかった場所がまだまだあったので、そのひとつ、ジャガラモガラに行きます。
ジャガラモガラ?
そうです。そんな不思議な名前の場所があります。
その名前の由来をきくと、
「昔あそこは姥捨て山で、泣きすがる老人を振り切るためジャガジャガと音を鳴らしていたから」といった答えが決まって返ってきます。
悲しい話だなあと思っていたのですが、ちょっと気になって文献をあさってみました。
県の天然記念物に指定されていることだけあって、何冊か熱心に研究された方の書籍がありました。面白く読んでいたのですが、学術的な話になってくると眠くなって仕方なかったので、ざっとで理解して済ませてしまいました。
私なりに要約します…ざっと
ジャガラモガラは地すべりでできた凹地。
地下は石英粗面岩の砕石からできていて、凹地にもかかわらず水がたまらない。
夏でも冷たい風が出る風穴がある。
高度を上げると変わってくる植物分布が真逆になっている。
それで、肝心の名前の由来に関して、確定したものはないみたいです。
ただ、先に挙げた姥捨て山の話はかなり怪しいようです。もっともらしくきこえて、信じ込まれやすそうな話。
文献では、わざわざ姥捨てで、戻ってこれないところまで置き去りにするのであれば、もっと遠くの山頂付近まで連れて行くのが現実的だろうと触れてました。
ジャガラモガラはそれほど人里遠く離れていないので、泣きすがりつくような元気なばあちゃんは、頑張れば帰ってこれるのです。
私が読んだ中で、一番説得力があったのは、次の話です。
…ジャガラモガラに伝わる伝承でこんな話がある。
「龍女成仏の伝説」
ジャガラモガラは湖だった。そこに住む龍女は成仏できず苦しんでいた。
龍女は女性に化身し、徳の高い僧侶から功徳を受けると、龍になって昇天することができた。
以降天童地域が干ばつに見舞われた際、雨乞いすれば雨を約束するといい、ジャガラモガラには水がたまらなくなった。
ジャガラモガラのくぼんだ凹地に水のたまらない現象を見て、不思議に思った人々がこんな話をつくって伝えていったのでしょう。
そしてこの話の元型が、仏典(法華経)にあることに気づいた方がいます。そしてその法華経から、名前の由来を読み解きます。
物語に登場する「龍女」が、経典では「沙伽羅龍王の女(さがらりゅうおう)」に対応しており、ジャガラモガラの「ジャガラ」はこの「沙伽羅(サガラ)」に由来しているのではないか。
さらに「モガラ」に関しては「殯(モガリ)」のことではないかという(殯とは古代葬法のことで、死後、白骨化するまで仮安置して祀る場所のことをいう)。
物語は龍になって昇天したということなので、死との結びつきが強いですし、殯という地名をあてられても特段不思議ではありません。
さらに、この地域一帯には仏教関連の影響を色濃く受けた文化がみられれます。芭蕉のにうたわれた山寺で名高い立石寺(天台宗)や若松観音がその例です。法典を地名の由来にするのはごく自然なかたちだと思われます…
っと、ここまでまじめに書いていて、自分で眠くなってきました。
もっと詳しく知りたい方は図書館で調べてください。
書名を忘れてしまったのですが、天童市の教育委員会が出していた書籍は、ジャガラモガラ愛ぐらぐら煮えたぎっていて、かなり胸キュンしました。
あ、そういえば山行記です。
スタートしましょう。
9:05
奈良沢不動尊を目指してきました。林道先が雪で覆われていたため、車を下車します。が、しかし…
なんか、ベアーズpoop熊糞な気がしないでもないものが落ちてました。
周辺は果樹農家さんがせっせと枝払いして働く地域のため、クマにとっても誘惑の多い場所でしょうし、ちょっと警戒。
季節は3月ですが、ずいぶん早起きですね。
奈良沢不動尊にお参りします。
涸れた沢に、お不動様が祀られていました。
林道に戻ろうとすると、お不動さんの脇に木道がひっそりと刻まれているのに気がつく。
どこまで続いているのか気になって登ってみました。
尾根上までつづいていました。
しかもその尾根には登山道のような道があります…地図にはまったくないトレイル。
尾根道で、迷ったら下に下れば林道か登山道があるのがわかっているので、たどってみます。
なんだなんだ?それっぽい道標まででてきました。
そして地図上にある登山道とぶつかる地点まで歩いてこれました。
ちゃんとした道標が立ってます。
鳥の巣でしょうか?
登山道は乾燥していて、歩きやすいです。
マイナーな山道で、冬の大雪もあったため倒木が目立ちますが、それでも雪道とは違ってどんどん距離が稼げます。
目指すジャガラモガラ方面は、凹地のため、雪が目立ってます。
まずは雨呼山(アマヨバリヤマ)を目指してます。
ジャガラモガラは雨呼山の地すべりでできた凹地です。
さらに、伝承された物語にもあるように雨乞いにかかわる龍神(水の神様)との関係が深い地域です。
ここはまず、その本丸である雨呼山を見ておかなければと思った次第で向かっているところです。
マンサクの花が咲き始めてました。
まず先に春を告げる花です。
笛を吹くと「ピーッ」となって、くるくる巻かれたカタツムリのような紙が伸びるおもちゃがありますが、そんなのに似ている花が咲いてます。
ミズナラの木だと思います。
尾根沿いに多く生えてましたので、秋に来ればマイタケが見つかるかもしれません。
10:38
雨呼山まで続く稜線に向かって最後の急登を登っていきます。
雪が目立ってきました。安全のお守り、頼りになる相棒のチェーンスパイクを装着します。
10:51
稜線に出ました。向こうに抜けるため、急に風が強まります。日が出て穏やかな天気でしたが、素手だとしびれてくるくらいに寒いです。
雪庇もありますので、注意して進みます。
それよりも注意しなければならないのがこれ。
木が雪の重さでたわんでる状態です。
雪が溶け始めているので、どこかのタイミングで、「バン!」と弾けて弓なりに矯めたエネルギーを存分に開放します。
かなり剣呑です。
さらに、こんなたわんだ木を、雪庇に注意しながらかわすのですが、時には跨いで越さなければならない場面も出てきます。
跨いだ瞬間に「バン!」なんてされたら…想像を絶します。
最大限の注意を払って進んでいきました。
11:15
雨呼山到着。
山頂には看板類がありませんでした。おそらくバックパックを立てかけている杭が、その名残なのでしょう。雪解けしたら顔を出す看板があるのかもしれません。
大変静かな山頂です。
木立がぱらぱらと生えているため、展望がきく場所ではありませんが、木々の隙間から覗く景色も、風情があっていとおかしです。
ほっとして、おにぎりと温かい味噌汁をいただいていると、なんかが近づいてくる足音が…
雪の時期の平日でしたので、まさか登山者が来るとは思っていませんでしたが、男性が一人登ってきました。
気さくな方で、地元の山辺町にお住まいとのこと。周辺の山々についてとても詳しく、いろいろ教えてもらいました。
12:21
帰路につきます。稜線から天童市内が望めます。
稜線上には地図にない登山道があるようで、どこかのタイミングで来た道に分岐しなければならないのですが、適当に来てしまったため見失ってしまう。
雪があるため、登山道の分岐が判然としないので、ここだと直感した場所を折り下っていくと…
大間違いの沢を降ってしまいました。
落ち着いてGPSで地図を確認すると、ひとつ先走って降ってきてしまったよう。
尾根をまた登り返していると…
日当たりの良い斜面にフクジュソウが咲いていました。
この花も春早くに咲く花で、まだ葉もつけていない株から、黄色い花だけが点々と咲いてました。
フクジュソウなんて大変縁起のいい名前の花に出会えたので、道迷いも悪くないと言い訳してみます。
福寿草
13:01
無事登山道に戻る。
道迷いの一件は反省します。もっと慎重に行動すべきでした。
尾根に出たタイミングで、ピンクリボン結んでおけばよかったです。ちゃんと帰りも考えて行動しないといけません。
帰りは、当初の目的地だったジャガラモガラ方面に立ち寄ります。
雪山からだんだんと春の気配が感じられます。
キノコや山野草が目覚めてきているなあ…とか感じ入ってたら、「ズダダダダッ」って何かが走って逃げました。なんだなんだ…
あっ!
ウサギだ。
しかも夏毛になっている!脱兎さ~ん
13:59
ジャガラモガラ到着
雪で真っ白に覆われていたため、凹地のくぼんだ感じがよくわかりました。
残念ながら、見たかった冷たい風が出る風穴は雪で埋もれてしまってました。
夏冷たいのであれば、冬は温かい風が出てるんじゃないかと勝手に思っていたのですが、期待は外れてしまいました。もし温かい風が吹いてれば、雪でふさがることはないでしょう。残念。
凹地
帰り道。ねじれてロープのようになった蔦が目につきました。もはや人工物のよう。
突然鈴の音がしてビビったら、登山道に張り出した枝につけてあった鈴でした。
14:44
三ツ石
ここで道が分岐してました。
この後、山頂で出会った男性と再会しました。
きくと大変の釣り好きで、立ち話を長々させてもらいました。
ずっと地元の山や川で遊んでいて、地図に載っていない登山道などを自分の足で歩いているお方。
とても参考になる話をきかせてもらいました。
4月に一緒に釣りに行く約束をして、お友だちになりました。
素敵な出会いに感謝です。
本日もゆぴあで締めます。死ぬほど冷たい水風呂が気に入ってます。
以上です。今回もありがとうございました。