Blog-極寒だら汁の回@蔵王山-前編

登山

1月ともなれば山形県日本海側にある庄内地方ではマダラが旬を迎えます。そしてこの旬を迎えたマダラこと寒だらをメインすえたフェスティバル「寒だら祭り」が庄内地方のあちこちで開催されます。
そんなお祭りムードにあやかって、この時期極寒であろうお山の上で寒だら汁を作る「極・寒だら汁祭り」をすべく、我が家の裏山、蔵王山に登山してきました。

寒だら汁こと「どんがら汁」について
農林水産省うちの郷土料理「どんがら汁/寒鱈汁_山形県」から引用

スタート=自宅の玄関がベストですが、残念ながら手ごろな山小屋がありません。自宅でさえ夜中に目が覚めるほど極寒の山形、お山の上は氷の世界に間違いなく、そんな中にテント張って雪の上で寝るなんて男前なことはできません。快適そうな山小屋がある刈田岳(カッタダケ)周辺に行くことにしました。

蔵王ライザワールド · 〒999-3113 山形県上山市蔵王坊平高原
★★★★☆ · スキー場

トレイルヘッドは蔵王ライザワールド。これ以降は蔵王エコーラインの山形側冬季閉鎖ゲートがあるため除雪されていません。

スキー場に到着しました。車のドアを開けると懐メロスキー場定番曲がお出迎えしてくれます。雪山挑戦で息巻いてきた気持ちが折れて、レストハウスであったかカレーが食べたくなりました。
しかし、バックパックの中には寒だらの切り身やら内臓やら粗やらが鍋に備えて待機しているので、ここで立ち止まれません。いざ出陣。

リフト乗り場はスノーボーダーの若者たちで賑わってます。
大荷物背負ってリフトの脇を素通りするわたしを不審なまなざしで見つめます。
せっせとゲレンデ脇を直登します。ひたすら単調な登りが続くため息が切れます。寒い中でもぬるぬるした汗をかきます。
服が濡れたら大変と少しペースを下げました。

リフト終点で、スキー教室の少年たちに後ろ指をさされたのが最後、バックカントリー静寂の世界に入りました。落ち着いたので小休止。

トレイルは、山形では珍しい二日前の好天で多くの登山者が登ったものか、多くの足跡がついていました。雪道だとこの足跡トレースをたどらせてもらえるほど楽なことはありません。登山道には50メートルおきくらいに3メートルほどの鉄パイプ先っぽ赤ペンキ印がささってます。雪質も締まって良好。

お田神避難小屋に着きました。

実はスタート地点から気になってはいたのですが、風が強い吹雪の状態が続いてます。視界は50メートル間隔で続いている鉄パイプが認識できる程度。もう一つ先の鉄パイプは全く見えません。
少し息をつきたかったので小屋に寄りました。

御田の神避難小屋 · 〒999-3113 山形県上山市永野
★★★★☆ · 山小屋

小屋の出入口である押し戸のドアは、雪で埋もれて使い物になりません。東側にある引き戸の窓から盗人よろしく転がりこみました。
外が吹雪だと室内の快適さが身に沁みます。熱いウーロン茶を淹れてほっと一息つきました。

室内は昭和な雰囲気抜群のグッツ達がお出迎えしてくれます。

昔懐かし黒板と黒板消し。入ってきた引き戸の窓に挟んで、いたずらしたい気持ちがわいてきましたが、最初に引っかかるのは吹雪でしょう。外は強風がすさまじく、鉛筆ほどの小さな隙間からも雪が吹き込み室内に積もっています。
しっかりと窓を閉めて刈田岳に向かいました。

山形県と宮城県の県境。ここから稜線まで一気に突き上げます。

稜線である「馬の背」にでました。
目印が、先ほどまでの鉄パイプから1メートル強ほどの木の杭に変わり、10メートル間隔になります。

風が酷く、視界が効きません。

蔵王山頂レストハウス · 〒989-0500 宮城県刈田郡七ヶ宿町
★★★★☆ · レストラン

レストハウス分岐点。すぐそこにあるはずの大きな建物でさえ10メートル近づかないと認識できないほどのホワイトアウト。吹き曝しの中、立っていることもままなりません。
スマホがここで死にました。胸のポケットに入れて寒さから守っていたのですが、それでも風が強すぎるせいか、低温でバッテリーがおかしくなったようです。地図アプリのGPSが使えなくなってしまいました。危険危険

蔵王刈田嶺神社 · 〒989-0916 宮城県刈田郡七ヶ宿町
★★★★☆ · 神社

この後刈田岳にある鳥居まで何とか進んだのですが、この先の避難小屋の位置がこれ以上判断できません。
吹き荒む真っ白の世界で、前後左右どちらに進んでいいかわからなくなるほど怖いことはないです。
おまけに焦って進んだせいか、太ももの筋肉が痙攣をおこしそうになってます。強風のせいで体温を奪われているのも関係している気がします。

敗退

自分足跡がまだついているうちに来た道を戻ります。目的地である刈田岳避難小屋はもうすぐ目の前のはずですが、これ以上前に進むのは危険と感じました。

突風の中でも、どでーんとかまえる真っ白な鳥居に手を合わせて、無事お田神避難小屋まで戻れるよう祈願しました。

スマホが死んでしまい、写真がないので残念ですが、この後、自分が来た足跡をたどって撤退をしました。足跡は場所によってはもうなくなっており、トレッキングポールがささった跡も手がかりにします。
登りの時には追い風だった突風も、帰りになると正面からの向かい風。口元を覆うネックウォーマーががっちがちに凍ります。自分の垂れてくる鼻水が暖かいと感じたのは初めての経験でした。

ほうほうの体で小屋までたどり着きました。夏ならば30分もしない距離だったので無理を押したのですが、大きく反省です。

本日はここまで。次回後編もよろしくお願いいたします。